「当社の経営環境は厳しさを増すばかり。ぜひとも貴社からしょうゆの供給をお願いしたい」
ワダカン食品工業(青森県十和田市)には、連日、窮状を訴えるこんな要請が電話やファクスで舞い込む。
依頼主は全国の中小しょうゆ業者。
小売りで二、三割は安いしょうゆを同業他社に供給する、同社への"援助"申し込みである。
「同業者か否かは関係ない。
当社製品を買ってくれる方はすべてお客様」。
佐々木秀宜会長の方針は明快だ。
完成品のOEM(相手先ブランドによる生産)や熱処理・味付け前の半製品(生揚げ)販売を合わせると、同社のしょうゆ生産量の四割は他社向けが占める。
この背景には業界の厳しい現状がある。
しょうゆ業者は全国に約二一二〇〇。
大半が家族主体の零細業者だ。
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