2013年9月アーカイブ

肉食民族の代表としてイギリスをみると、同じくいびつな三角形でも左足(F)が長い。

日本はというと、第二次大戦期の混乱を克服して「戦前」にもどった60年代には、今日のタイよりも右足が長く左足が短い。

コメをたくさん食べることでタンパク質もコメから摂取するが、肉類を食べる量が今日のタイより少なく、そのために脂質摂取量が理想的食事パターンの半分もない(摂取比率一〇・六%)という状態だった。

その後、高度成長と平行して進行した食生活洋風化によって肉類の摂取が増え、70年代には理想の正三角形にほぼ到達した。

主食であるコメを中心に畜産物、魚介類、野菜、果実など多様な食品を摂ることで、バランスのとれた「日本型食生活」をしていたわけだ。

正三角形であれば「理想的な食品摂取バランス」ということになる。

食生活パターンにもお国柄がある。

身のまわりで獲得可能な食物で生きてきたという人類の歴史からみれば当然のことだ。

風土にかかわる残留農薬検査対応農業生産状況、経済的な生活水準の違いによって、この三角形の形が変わってくる。

アジア・モンスーン地帯でも有数のコメ生産国であるタイは、典型的な米食民族だから、右足が長い、いびつな三角形。

残留農薬検査
それが80年代以降、日本の食生活洋風化がオーバーベース気味で進み、バランスが肉食民族並みに崩れてきたのである。

ここでいうバランスとはPFC熱量比のことで、タンパク質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)の三大栄養素を、カロリー計算でどのような割合で摂取しているかを表す数値である。

日本人の体格からいって、二〇歳以上の成人だと、タンパク質は22%ぐらい、脂質は25%ほどに抑えることが、成人病(生活習慣病)予防のために必要だといわれている。

厚生労働省が調べている「国民栄養調査」でみると、70年代の日本の食生活は理想的だった。

フランスの農学者ジョセブ・クラッツマンが日本を「満足できる食料消費」と誉めてくれたのは、1970年代の日本人の食生活だった。

彼が今日の日本の食卓をみたら、どういうだろうか。

たぶん「日本人よ、お前もか!」と落胆するにちがいない。

70年代の日本は、一人一日当たりの栄養摂取量は二五〇〇キロカロリー台、日本人の体格からみて適量であったし、なによりも摂取食品のバランスがよかった。

「日本型食生活」と評価されたのは、その頃のことである。

トマト、コマツナ、キャベツ、ミカンなども同じように、化学肥料も堆肥も、それに水やりも、うんと控えめにして栽培したほうがおいしくなるという。

露地だからおいしいとは限らない。

ハウス栽培のトマトのほうがおいしいということもある。

時と所によって、野菜のうまい時期は異なる。

沖縄と北海道では旬は別になる。

露地栽培だから一番ということもない。

あるいは肥料の与えすぎによって、まずい野菜になることもあるのだ。

通常は一〇〇グラム中に八〇〇~一〇〇〇ミリグラムあるシュウ酸が、三〇〇~五〇〇ミリグラムくらいに減る。

それだけえぐみ(苦みの味)がなくなり、おいしさが増す。

なお、このように肥料をやらずに育てられたホウレンソウの葉は、青々とした緑ではなく、少し黄色がかった黄緑になる。

スーパーなどでみかける青々としたホウレンソウはおいしそうにみえるが、ビタミンCの含有量が少ない。

これは、窒素肥料を大量に与えたことによるものだ。

要は、雨水で水浸しにすることを避け、少量の液肥で、できるだけ乾燥状態にして育てるとおいしいということだ。

これは、夏なら雨の少ない長野県の高原や、涼しくて雨の少ない北海道、真冬は沖縄県でとれたホウレンソウがおいしいことと符合する。

その後、薄い液肥(冬六〇〇倍、夏一二〇〇倍に肥料を水で薄めたもの)を一平方メートル当たり一・五リットルくらい散布する。

そのあとは、ホウレンソウがしおれかかった頃あいに少量の液肥を、葉にかからないようにして散布する。

ホウレンソウの生育の初期に石灰を大量にやると、かえって生育障害を起こし、鉄分などの吸収を妨げる。

このように雨よけをしてつくったホウレンソウはビタミンC、糖度が高くなり、一方、体に悪いシュウ酸(染色などに使う有機酸)が少なくなる。

特別の酸性土以外は石灰も使わない。

ウネ(作物を植えるために土を盛り上げた所11畝)はなるべく高くつくり、排水をよくする。

冬は光を採り入れるようにビニールは透明なもの、夏は古くて少し光をさえぎるものがいい。

夕立の雨などがかからないようにし、夏は換気に努める。

種をまいたあと、カルシウムを含む天然の鉱石(石灰)と窒素、リン、カリウムを含む有機物を発酵させたものを少しまく。

土中には入れない。

「緑健農法」といわれる野菜づくりを指導している永田照喜治さんによると、おいしいホウレンソウは、次のようにすればつくることができる。

冬のホウレンソウが甘味があっておいしいのは、雨が少ないから。

ホウレンソウの原産地はイラン高原の砂漠のような場所だから、雨の多い日本でそれに近い状態を再現させるにはビニールハゥスかプラスチックフィルムのトンネルをつくり、堆肥や化学肥料を入れず、なるべくやせた土地にする。

「自然はおいしい」といい、ハウスや温室栽培ではなく、露地(雨や露がじかにあたる地面のこと)でつくった野菜のほうがおいしいと信じている人もいる。

「太陽がいっぱい」とか「本物」といったイメージから、露地ものがおいしいと信じる人も多いようだが、実はあまり関係がない。

トマトは夏より冬のほうがおいしいという人もいる。

ビニール栽培は家庭菜園ではちょっと面倒だが、できたら自分で試してみるとわかる。