2014年12月アーカイブ

1974年通商法第301条に基づく調査は,1991年10月までに合計87件行なわれたが,そのうち40件は1985年から91年までの6年間に行なわれた調査である(1989年と90年に行なわれたスーパー301条調査を含む)。

見過ごしてならないのは,このような301条調査の増加が,ガット提訴の増加につながったことである。

なぜなら,同通商法上,他国のガット違反の措置(いわゆる「不公正措置」)については,通商代表はまずガット上の紛争処理手続を踏むことが期待されているからである。

後述のように,301条の大きな問題は,このガットの手続きを最後まで守り切らないで,特定期間のあとは一方的制裁をとれることとなっている点にあるが,それでもガットの手続きを完全に無視しているものでない点に留意する必要がある。

たとえば,米国通商代表は,1990年中に14件の貿易紛争について301条調査を終結ないし停止したが,このうち7件はガット紛争処理手続がなんらかの形で使われたケースである。

とりわけECはガットの紛争処理メカニズムが裁判所のそれのようになることにはかねてより強く反対しており,あくまでも政治的な配慮の余地を残した紛争処理の枠組みにしておきたかった。

このような考え方の違いは,パネル報告の理事会における採択の方法や仲裁制度の導入の問題をめぐって表面化した。

パネル報告の採択がコンセンサスで行なわれる。米国やニュージーランド等は,パネル報告の採択を当事国が妨害できる従来の手続きでは紛争処理の実効性が担保されないとしてこれを見直すことを主張した。

なかでもオーストラリアは,理事会がパネル報告を採択する際には,紛争当事国ならびに当該紛争案件に関心を表明した関係国を除外すべきとの主張を行なっている。

このような考え方がいわゆる「コンセンサス・マイナス・21」と呼ばれるものである。


紛争当事国以外の第三国の関与の問題,事務局長による斡旋の強化,非政府系パネリストのいっそうの活用,拘束力のある仲裁制度等について具体的な改善策が提案された。

米国をはじめEC,日本,カナダ,オーストラリア等主要国が提案を提出し終わった1988年初頭の時点では,パネル審議の迅速化に関わる手続き上の改善については,各国提案に共通点が多く,議論はまとまる方向に向かった。

このため,紛争処理はガット機能と並んで1988年末の「中間レビュー」で他の交渉グループに先立って交渉成果を実施に移す対象項目となった。

しかしながら,ガットの紛争処理の基本的な性格づけについては,以前から存在していた意見の対立がそのまま尾を引いていた。

つまり,調停的役割を重要視する国(EC,日本,韓国,ブラジル等)と紛争処理における法の支配の強化を主張する国(米国,オーストラリア,ニュージーランド等)との間の対立である。

さらに上記(c)は特定の締約国の主体的行為による利益の無効化・侵害を企図してはおらず,(b)と(c)はいわゆる"non・violation case"(無違反案件)を取り扱っている。

このように,第23条1項にいう無効化・侵害という概念は単にガットに対する違反行為を前提とするものではなく,こうした違反の有無は無効化・侵害というガット上の権利と義務の均衡が崩れた状況を生み出す一要素と考xられている。

その上で本条項はなんらかの行為や状況の存在ゆえに失われた権利と義務の均衡を回復させるために調整の機会を設定するとともに,このような協議を求められた締約国には申立国に対し「友好的な配慮」(sympathetic consi-deration)を払うことを要求しているのである。

このことからガットが起草された時点では,ガット上の義務履行確保のための厳格な紛争処理協定というよりは権利と義務の均衡を調整する機能の方に重点が置かれていたといえよう。

無効化または侵害は次の3つの状況において起こりうるとされている。

(a)他の締約国がガットに基づく義務の履行を怠った結果,(b)他の締約国が,ガットの規定に抵触するかどうかを問わず,なんらかの措置を適用した結果,および(c)その他のなんらかの状態が存在する結果,の3点である。

上記の文言を検討して最初に気がつくのは,無効化または侵害の要因として必ずしも一般協定に対する「違反」(violation)が想定されているわけではないという点である。

上記(a)にいう「義務の履行を怠る(failure)」というのが最も厳しい文言になっているが,これとて純粋に法的概念とはいいがたい。

また,上記(b)についても「なんらかの措置を適用」とあるが,それがガット規定に照らして合法か非合法かは問わないとしている。

日本人の年平均所得は500~600万円であるから,労働日数250日として1日2万~2万4000円になる。

これは稲作労働の約3倍である。

さらに,コメについては約6倍の内外価格差を価格支持により埋めているから,他産業との生産性格差は約18倍(3×6=18)にもなる。

日本のコメ生産は昔からこれほど生産性が低かったわけではない。

池田内閣時代(1960年)には,コメの輸入価格の方が国内生産コストより約4割高かった。

(3)こうした低い生産性が現在の後継者難につながっている。

日本農業の担い手(基幹的農業従事者)は年h高齢化して,引退が近い者が多い。

また,農水省の「農業調査報告書」によると,1991(平成3)年1月現在後継者(年間150日以上自家農業に従事した30歳以下の男子農業従事者)は,全国平均で78。

8戸に1人しかいない。

とくにコメの主産地ほど状況が厳しい。


武田邦太郎氏は日本新党所属の参議院議員で,武田新農政研究所所長でもある。

同氏の意見を次に要約しよう。


(1)農産物の自由化は時代の趨勢であり,避けることができない。

国際競争力がないから,自由化すれば国内農業が壊滅してしまうとの前提で交渉しているのは間違いである。

自由化してもびくともしない農業を育てることが肝要である。

コメの保護の関税化を契機として,日本農業の体質強化策を積極的に進める必要がある。

(2)現在日本の農家は後継者難に陥っている。

とくに,稲作農家でそれが深刻である。

これは所得が少ないことが原因である。

稲作の場合,家族労働の1人当たり1日の労賃は,約7000円で,東南アジアの出稼ぎ労働者の平均労賃1万円~1万2000円よりも少ない。