無効化・侵害という概念 その2(残留農薬検査)

| コメント(0)
さらに上記(c)は特定の締約国の主体的行為による利益の無効化・侵害を企図してはおらず,(b)と(c)はいわゆる"non・violation case"(無違反案件)を取り扱っている。

このように,第23条1項にいう無効化・侵害という概念は単にガットに対する違反行為を前提とするものではなく,こうした違反の有無は無効化・侵害というガット上の権利と義務の均衡が崩れた状況を生み出す一要素と考xられている。

その上で本条項はなんらかの行為や状況の存在ゆえに失われた権利と義務の均衡を回復させるために調整の機会を設定するとともに,このような協議を求められた締約国には申立国に対し「友好的な配慮」(sympathetic consi-deration)を払うことを要求しているのである。

このことからガットが起草された時点では,ガット上の義務履行確保のための厳格な紛争処理協定というよりは権利と義務の均衡を調整する機能の方に重点が置かれていたといえよう。

コメントする